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今回は2023年Angle Orthodontistに投稿された論文の紹介です。現時点でのインパクトファクターは2.684です。
この論文は、アメリカおよびカナダの矯正歯科医を対象にクリアアライナー治療(CAT)プロトコルとプレファランスを調査した初のオンライン調査です。
是非最後までご覧いただき、お忙しい先生方の情報収集にお役立てください。
クリアアライナー、オンライン調査の題目・著者
【題目】
Insight into clear aligner therapy protocols and preferences among
members of the American Association of Orthodontists in the United States
and Canada
PMID:36912674 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36912674/
【著者】
Sarah Abu-Arqubla ; Ahmad Ahmidab ; Lucas Da Cunha Godoyc
; Chia-Ling Kuod ; Madhur Upadhyaye ; Sumit Yadavf
a : Assistant Professor, Department of Orthodontics, University of Florida, Gainesville, Fla, USA.
b : Private Practice, San Antonio, Tex, USA.
c : Doctorate Candidate, Connecticut Convergence Institute for Translation in Regenerative Engineering, University of Connecticut Health Center, Farmington, Conn, USA.
d : Associate Professor of Orthodontics, Connecticut Convergence Institute for Translation in Regenerative Engineering, University of Connecticut Health Center, Farmington, Conn, USA.
e : Associate Professor, Division of Orthodontics, University of Connecticut Health Center, Farmington, Conn, USA.
f : Professor and Chair, Henry and Anne Cech Professor in Orthodontics, Department of Growth and Development, UNMC, College of
Dentistry.
Corresponding author: Dr Sumit Yadav, Professor and Chair, Henry and Anne Cech Professor of Orthodontics, Department of Growth and Development, UNMC College of Dentistry, Lincoln, NE (e-mail: yadav_sumit17@yahoo.com)
【雑誌】
Angle Orthodontist, Vol 93, No 4, 2023
DOI: 10.2319/101022-694.1
【キーワード】
Clear aligner treatment; Orthodontist
クリアアライナー、オンライン調査の目的・方法
目的
【主要目的】アメリカとカナダの矯正歯科医におけるCATの適用と実践の調査
【副次目的】矯正歯科医がCATにおける様々なタイプの不正咬合を治療する際の自信度を明らかにすること
方法
コネチカット大学により承認された横断研究である。Google Formを用いた3つのセクションからなるオンライン調査をおこなった。アメリカ矯正歯科学会(AAO)所属のアメリカおよびカナダの正会員4216人に電子メールにて調査を行った。160人の矯正歯科医が調査に回答し、回答率は3.8%であった。
クリアアライナー、オンライン調査の結果
Table 1.オンライン調査基本情報
表1は、オンライン調査の基本情報を示したものである。
以下、主要な項目をグラフにまとめました。
・現在、CATをどのように使用していますか?
・CATが診療に占める割合はどれくらいですか?
・使用しているアライナーの種類はどのようなものですか?
Table 2. 患者のCATに対する選択、満足度、要望
表2は、患者のCATに対する選択、満足度、要望を示したものである。
以下、主要な項目をグラフにまとめました。
・どの年齢層が多いですか?
・患者がCATを選択する理由は?
・患者がCATに何を求めていますか?
・CAT患者のカテゴリーは?
・患者のCATの結果に対する満足度は?
Table 3. 不正咬合と歯の移動の容易度
表3は、様々な不正咬合の治療に対する矯正歯科医の自信度を尋ねた結果を示したものである。
以下、主要な項目をグラフに示しました。
・次の不正咬合に対処できますか?(自信がある、かなり自信があると回答した割合)
・CATで達成できる動きを簡単である(1点)から難しい(6点)まで点数をつけてください
Table 4. CATのプロトコル、マネージメント、調整
表4は、CATのプロトコル、マネージメント、調整について示したものである。
以下、主要な項目をグラフに示しました。
・どのようなスキャナーを使用していますか?
・アライナー交換のタイミングは?
・CATと併用する器具は?
・どのようなTADを使用しますか?
・抜歯のパターンは?
・CATの前に使用する器具は?
・どのようなところにデジタルセットアップの変更をしますか?
・リファインメントは頻度について回答してください
回答者の平均8.44点±1.77
1点:全くない~10点:必ずする
・リファインメントの理由について回答してください
・オーバーコレクションを設定しますか?
Table 5. CATのプロトコル、マネージメント、調整
表5は、CATのプロトコル、マネージメント、調整について示したものである。
以下、主要な項目をグラフに示しました。
・どのような動きにオーバーコレクションを加えますか?
・CATと併用する治療は?
・固定式装置とCATの治療結果に違いはある?
・固定式装置はすべての歯の移動の3Dコントロールに優れ、より良い咬合接触が得られますか?
・あなたの臨床経験においてCATの正確な動きは何ですか?
・次の補助療法のうちどれを使用しますか?
・インハウス・アライナーを使用していますか?
・インハウス・アライナーは使用の用途は?
・Dental monitoringを使用していますか?
・CATの保定には何を使っていますか?
クリアアライナー、オンライン調査の考察
本研究の目的は、臨床医がCATをどのように認識しているかを概観し、CATの使用に関する一般的な臨床実践を掘り下げることであった。この研究の長所は、有効性の確立された調査票を作成するために用いられた体系的な方法とAAO Partners in Research Programによって無作為抽出されたサンプルを配布したことであった。
本調査において、患者がCATによる治療結果に概ね満足していることが示された。先行研究においても、インビザラインが固定装置と比較して口腔衛生の改善と満足度の向上につながったことが示されている(7,8)。
この横断的調査の限界は、2回の配布にもかかわらず回答率が低かったことである。これは、調査期間 が長かったことと、回答者にインセンティブを与えなかったことに起因すると思われる。一方、回答者 の平均年齢は52.56± 11.94歳であったため、本調査 を研修医や新卒者に配布した場合、報告されたCAT の実践方法やプロトコルは異なっていた可能性がある。
クリアアライナー、オンライン調査の結語
インビザラインは最もポピュラーなクリアアライナーシステムで、臨床医も自信を持って使用しているようである。
矯正医はCATの落とし穴を認識しており、アライナーを使用して歯根の移動やextrusionを行うこと は困難であると感じている。軽度から中等度の不正咬合をクリアアライナーで治療することに自信を持っているようで、埋伏歯や重度の骨格的 問題を持つ複雑な患者は避けているようである。
重度の不一致を解決するためには、エラスティック 、TAD、 エキスパンダー 、またはsectional fixed appliancesを併用することが望ましい。
プロバイダーは1週間の交換プロトコルを好むが、 望ましい目標を達成するためには、しばしば改良が必要である。
インハウス・アライナーとデンタル・モニターは、CATで人気を集め始めている。
クリアアライナー、オンライン調査引用文献
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